煌夜祭 (多崎礼) (中央公論社C☆NOVELS)

世界を記述するための道具=ファンタジー

十八の島から成る架空世界を舞台に、冬至の夜に島主の館に集った二人の仮面の語り部により交互に語られる物語。二人の語る七つの物語によって少しずつ語られる人物、地名、歴史が、一つ二つとリンクしはじめて、緻密に編み上げられたタペストリーのような作品世界が目の前に浮かび上がってくる構成には圧倒されまくり。

複数の物語や短編が全体の大きな物語を構成するってのが売りの本は、けっこう当たり外れが大きくて自分みたいに読解力のない人間には難度が高かったりするんだけど、この本は実に分かりやすかったです。それでいて物語のピースがカチリとはまる快感はなかなかのもの。ミステリ的なミスリードもあったりと最後まで楽しめました。

ネットでの評判も上々だし、自分的な評価もかなり高いのに、どうもこの本は売れてない雰囲気。ちなみに発売から1年が経過するのに私が買ったのは未だ初版でした。これだけの力がある作者なのに2冊目が出ないのも痛い。マイナーレーベル、地味な表紙もあるけど、本格ファンタジーと言うジャンルは今でじゃ不人気なのかな…。更に俗っぽい内容になっても売れ線の電撃あたりで活躍して欲しい作家さんです。

煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)

煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)